【書評】イスラムの秘儀エニアグラム『9つの性格』鈴木秀子

心理学

今回紹介するのは、人の性格を9つに分類する「エニアグラム」扱った本です。

 企業の研修でも使われるエニアグラム

「エニアグラム」は企業などでも実践されるポピュラーな性格分類です。かくいう私も、勤め先でエニアグラムの研修を受けたことがあります。他人に仕事を頼んだりする際に、相手の性格の違いに応じて適切なコミュニケーションをとろう、というような非常に実務的な内容の研修でした。

性格の違う人同士の話し合いがうまくいかない事例が紹介され、性格に応じた対処法を教えられました。例えば、タイプ4「特別な存在であろうとする人」なんかに、無感情に理屈を並べて物事を依頼しても、なかなか受けてもらえない。一方、タイプ5「知識を得て観察する人」は必要性が分かればメール一本で十分、といった具合です。

人は9つ性格のどれか一つを持って生まれる

エニアグラムでは、人間の性格を以下の9つに分類します。

  • タイプ1 完全でありたい人
  • タイプ2 人の助けになりたい人
  • タイプ3 成功を追い求める人
  • タイプ4 特別な存在であろうとする人
  • タイプ5 知識を得て観察する人
  • タイプ6 安全を求めて慎重に行動する人
  • タイプ7 楽しさを求め計画する人
  • タイプ8 強さを求め自己を主張する人
  • タイプ9 調和と平和を願う人

誰もがこの中のたった一つの性格を持って生まれてきて、人数の比率は等しくなる、というのがエニアグラムの考え方です。性格を複数のパラメータで捉えるものではなく、完全な「分類型」です。自分に当てはまるタイプがこの中で2つくらいあるかな〜と感じたとしても、診断の結果で最も当てはまるどれか一つを選ばなくてはいけません。エニアグラムのこの単純化された面が、分かりやすさとツールとしての使いやすさを生んでいるわけです。でもその分、自分はこっちのタイプの面も持ってるかも・・という本来もっと複雑かもしれない自分の性格をここまで単純に分類してしてしまうことで、ある種のモヤモヤ感が残ることも事実です。

イスラムの秘儀

この本によると、エニアグラムが生まれたのは2000年(!)ほど前で、イスラム神秘主義(スーフィズム)教団が重要視していたものだそうです。代々の指導者のみがそれを秘儀として継承して、教団のリーダーたちの育成ツールとして使っていたそうです。2000年も前に、人間が先天的に異なった性格を持って生まれてくることを理解して、それを教育などの実践的なことに活かしていたというのは本当にすごいことですね。先進的すぎです。その後20世紀になってからエニアグラムが心理学の世界で再度注目され、企業でも実践されるようになりました。

秘儀というだけあって、このスピリチュアルな理論に対する科学的な説明は少なくともこの本には書かれていません。でも、自分自身をより理解したり、人と自分の性格は生まれつき違うんだという前提に立ってより良い人間関係を築くエニアグラムの考え方は、かなり「楽しい」ものだし、実際「役に立つ」ツールであることは間違いありません。

自分を診断してみた結果

ちなみに自分の性格を診断してみた結果は「タイプ5」でした。タイプ6の要素もかなり持っている気がして、正直5と6のミックスなのにな〜と思いつつも、一つを選ぶエニアグラムの流儀にのっとって切り捨てです。タイプ5は感情より理性というタイプで、知識を得ることで喜びを得ます。解説を読むめば読むほど、まるで人でなしな性格だな〜という感じですが・・。とにかく自分にあてはまりすぎてびっくりです。この「そうそう、そうなんだよ!」という感覚を楽しむだけでも性格分類は価値があると思います。本の中に「エニアグラムに対する興味もタイプ5は強い」と書いてあって、思わず笑ってしまいました。

エニアグラムの診断はネットで検索すればいくつか見つかるはずなので、皆さんもぜひ試してみて下さい。

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