【書評】『NOISE ノイズ』ダニエル・カーネマン他

心理学

組織やシステム内で発生する判断のばらつき、「ノイズ」。個人のバイアス(認知の偏り)と比べて見過ごされがちだが、時に甚大な悪影響を及ぼす。保険料の見積もりや企業の人事評価、医師の診断や裁判の判決など、均一な判断を下すことが前提とされる組織においてノイズが生じるのはなぜか? そしてノイズを減らすために私たちができることは何か? 生産性の向上と社会的公平性の実現に向けて、行動経済学の第一人者たちが真に合理的な組織のあり方を描く。

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感想

バイアスについての名著『ファスト・アンド・スロー』の内容の繰り返しにならないかを懸念してたのですが、杞憂どころか、ノイズという全く新しい視点で書かれた目から鱗の内容でした。統計学的な中央値のずれがバイアスなのに対し、標準偏差の大きさがノイズです。

経営判断や司法判断などの一度きりの判断は、繰り返しや結果の検証がされないために、信じられないほどのバラツキを持っていることが認識されていません。本書はその衝撃の事実をデータで示してくれむす。さらに、判断者ごと、判断ケースごと、または偶然性によるもの、などの要素にノイズを分解して、ノイズ全体がその要素の二乗和になっていることが説明されます。

これ、今の自分の会社でもある話だな、とすごく刺さって、わくわくしながら読み進めました。ノイズ大盛りの決定が日々なされているのに、それに気づかないのか気づかないふりをしているな、と思う場面がたくさん頭に浮かびます。

バイアスを減らす重要性が広く認識されてきた中で、本書はノイズという新たな課題を突きつけます。下巻ではそれに対する改善策が提案されています。どれも現実的に導入できそうな案で、すぐにでも取り組めそうです。しかし、まず自分たちの決定にノイズがあることを認める(つまり過去の判断の間違いを認めること)というハードルをいかにこえるかが大きな課題になりそうです・・。

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