【書評】世界史入門の1冊目におすすめ『世界全史』宮崎正勝

歴史

大人になってから教養として世界史を勉強しようと思ったとき、まず1冊目に読むならこれが絶対におすすめです。世界史の通史の本となると、どうしてもそれぞれの時代や地域ごとの解説の寄せ集めになってしまいます。まず最初に世界史全体の流れを俯瞰で理解してから、各国史やテーマごとの歴史を学びたいと思ってもなかなか良い本がありません。ところが本書は、世界史全体を1つのストーリーとして、因果関係をしっかり説明しながら見事に1冊の本にまとめています。まさに最高の入門書です。

世界史の道筋は4つの段階に分けられる

本書の本文が始まる前に、まず世界史全体の流れをラフにつかむための図解が何ページかにわたって載っています。その図解がかなり秀逸です。シンプルにデフォルメされた世界地図に、徹底的に要点をしぼった因果関係の説明が入っています。この、最初に全体のストーリーの要点を示すっていう構成が他の本にはない部分です。本書はまず世界史を4つの段階に分けた上で、それぞれをいくつかの図解で概観しています。序盤の図解を、さらに要点を絞り切って1枚の図にしてみました。

世界史の道筋は4つの段階に分けられる

まず前史。アフリカの大地溝帯で人類の祖先が生まれ、それが全世界に広がっていきます。農耕が始まり感慨が発達することで、都市と国家が生まれます。四大文明の始まりですね。そして第1段階は陸の世界史です。ユーラシア大陸にローマ帝国や漢王朝といった国家が地域を統合していきます。イスラム帝国とその後のトルコ人国家の時代を経て、モンゴル帝国がユーラシアにスーパー帝国を築き、大陸が一体化していきます。第2段階は海が結ぶ世界史です。大航海時代の後、ヨーロッパ勢による大洋貿易が盛んになります。それが産業革命と資本主義の成立へと繋がっていきます。最後の第3段階はグローバル世界史です。経済の一体化が進み不況が世界中に連鎖します。2度の世界大戦を経て、アメリカ覇権によるグローバル経済が成立していきます。

これを見ると、奥の深い世界の歴史をそんなに単純化してしまって良いの!?と思ってしまいます。でも、そのくらい単純化したイメージを掴んだところから勉強を始めた方が、その後にテーマごとの細かい本を読む際の軸ができるので良いと思います。本書は、どちらかというと「経済」の動きに視点を置いて歴史を語っています。そのことが出来事の因果関係をクリアに説明することに繋がっています。ここまでシンプルにまとめるなら、この視点の選び方は絶妙だと思います。

世界史の入門書におすすめな理由がいっぱい

この本を1冊目におすすめする理由は他にもいっぱいありますので、まとめておきます。

  • 1冊にまとまっているのに、内容を詰め込み過ぎていません。濃すぎず薄すぎず、一気に読める上に物足りなさもそれほどありません。
  • それぞれの出来事の説明が独立していません。必ず前後の出来事の因果関係が説明されていて、1冊が1つのストーリーになっています。
  • 割り切って人物にはフォーカスせずに、国、地域、世界のマクロな流れを経済を軸に説明しています。教科書的には重要なミクロな話をあえて削ることで流れが分断していないので、一気に読めます。
  • ムダをそぎ落とした図解がとにかくわかりやすいです。

世界を変えるポイント

例えば「ローマ帝国」といった特定のテーマが気になって関連する本を読んだりする。歴史に興味を持つ時って、そういうパターンが多いと思います。でも世界史全体の流れって、意外となかなか頭に入れる機会がないですよね。世界史に精通している人は別として、これまでいくつか歴史の本を読んだことがある程度の人がこれを読めば、今までテーマごとに細切れだったものが、一気に1つの流れにつながる衝撃を味わえると思います。世界史全集のような通史だと膨大な量に挫折するし、高校の歴史の教科書のような本だと説明が淡々としていてつまらない。そんな中で、本書は世界の通史をストーリーで楽しく味わえる、すごく貴重な本になっています。

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