【書評】王道漫画の描き方『荒木飛呂彦の漫画術』荒木飛呂彦

芸術

傑作漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の作者である荒木飛呂彦が、漫画の描き方を解説してくれるハウツー本です。ジョジョは、あの独特の絵柄から「異色作」と思われがちですが、意外にも著者はジョジョをはじめとする彼の作品が実は自身が考える「王道漫画」の方法論に沿って書かれていると言います。本書はそのハウツーを非常に具体的に公開するという太っ腹な内容です。漫画の「基本四大構造」としてキャラクター、ストーリー、世界観、テーマを挙げ、ご自身の漫画を例にとってそれぞれの詳細が解説されています。漫画家志望者だけではなく、あらゆる物語の創作に関わる人や、それを鑑賞する側の人にもおすすめできる本です。

基本情報

作者:荒木飛呂彦(漫画家)

発行日:2015/4/17

ページ数:288

ジャンル:芸術>漫画

読みやすさ

難易度:読みやすいです。短時間で読みきれます。

事前知識:荒木飛呂彦の漫画を多少読んだ後の方がより楽しめます。

おすすめ予習本:

目次とポイント

第一章導入の描き方:最初の1ページで漫画のエッセンスと個性を見せ、最後まで読ませるものにしなければならない

第二章押さえておきたい漫画の「基本四大構造」:キャラクター、ストーリー、世界観、テーマ、の4つを全ておさえるのが王道。ただし、どれか特定の要素で飛び抜けた個性を持つことで成立する場合もある

第三章キャラクターの作り方:性格や経歴など、直接漫画で表現されないものも含めて細かい設定のディティールを作っておくことが重要

第四章ストーリーの作り方:起承転結が基本。主人公の状況や内面は常にポジティブに上がっていかなければいけない。ディティールを作り込んだキャラをある状況に置くことで、ストーリーが勝手に動き出す

第五章絵がすべてを表現する:上手下手よりも、一目で誰の作品かが分かる圧倒的な個性の方が重要

第六章漫画の「世界観」とは何か:日常にせよ非日常にせよ、読者をその漫画の世界に「ひたりたい」と思わせるために、世界観は綿密に作り込む必要がある

第七章全ての要素は「テーマ」につながる:テーマは作者が何を書きたいのか、という個人的な哲学であって、売るために読者に合わせて作り出すものではない

実践編その1漫画が出来るまで:日々新しいことに触れて、面白いと感じたこと、興味を持ったことをメモしてアイディアをためておく。そうすればアイディアが枯渇することはない

実践編その2短編の描き方:本書のハウツーを『富豪村』という短編に沿って実例紹介

感想

私が持っていた荒木飛呂彦の漫画のイメージは、「個性的」です。まさに一眼見て彼の作品と分かる独特な絵柄、ゴゴゴゴ・・などの特徴的な効果音、変わったセリフまわし等々。でも本書を開いて最初に書かれているのは意外なことに「王道漫画」という言葉です。ジョジョをはじめ彼の作品は、その個性的な演出の裏に、確固たる王道のルールが存在する、という事実はまさに目からうろこでした。導入部でしっかり読者を引き込む。何かの要素を突出させるのではなく、基本四大構造の全てをきっちり作る。主人公は全編を通してポジティブに変化させる。キャラクターや世界観の設定は細かいディティールまで綿密に決めておく。それらの基本に忠実な土台があってこそ、彼の個性が活きた傑作が生み出されてきたのです。

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