ディズニーにあまり興味がないけど、彼女や子供の付き合いでディズニーランドに行くという人も多いと思います。そんな人でも知ってると意外と楽しめる、歴史やコンセプトについての知識を紹介していきたいと思います。今回はパーク全体のコンセプトのお話です。
はじめに
東京ディズニーランドは「夢と魔法の王国」とよく言われますが、ウォルト・ディズニーが作ったオリジナルのパークのコンセプトは少々違ったものでした。計画当時の投資家向けの説明文には以下のように書かれています。
ディズニーランドの構想はごく単純なものであり、それは、人々に幸福と知識を与える場所である。親子が一緒に楽しめるところ。教師と生徒が、ものごとを理解したり学びとるための、より良い方法を見つけるところ。年配の人たちは過ぎ去った日々の郷愁にふけり、若者は未来への挑戦に想いを馳せる。ここでは、自然と人間が織りなす数々の不思議が私たちの眼前に広がる。ディズニーランドは、アメリカという国を生んだ理想と夢と、そして厳しい現実をその原点とし、同時にまたそれらのために捧げられる。こうした夢と現実をディズニーランドはユニークな方法で再現し、それを勇気と感動の泉として世界の人々に送るものである。
『ウォルト・ディズニー 創造と冒険の生涯』ボブ・トマス著
ディズニーランドは「幸福」と「知識」を得る場所だったのです。そして重要なのは、それは典型的なアメリカ人にとっての郷愁と未来だということです。アメリカという国を生んだ理想・夢・現実、その精神は19世紀の西部開拓時代に土台があります。ディズニーランドのマップ左側半分は、まさにそんな時代のアメリカそのもの、そしてアメリカ人の冒険心をくすぐった世界中の場所に私たちを連れて行ってくれます。
厳しい父親のもとで幼い頃から働かされて「少年時代」を喪失したウォルトは、大人になってそれを取り戻そうとするかのごとくディズニーランド作りに熱中しました。そこはウォルトが少年だった20世紀初めのアメリカと、当時の少年が抱く冒険心を再現する場所なのかもしれません。
1つの入り口とハブ
ウォルトは周囲の遊園地経営者達から入り口は複数設けるべきだと忠告されていましたが、入り口を1つにすることは断固変えませんでした。彼は映画製作者です。テーマパークに対しても、客が体験する「ストーリー」を重視しました。入り口が何個もあっては、そのストーリーをコントロールすることはできません。入り口からまっすぐ伸びるメインストリートをシンデレラ城に向かって進むと、そこにはハブとなる広場があります。そこから、放射状に各エリアに向かう道が伸びています。客は方向感覚を失わず、誰が何度来ても一貫したストーリーを体験することができます。
また、各エリアの境界は建物のデザインや色が断絶することなくスムーズに繋がれています。違うテーマのエリアを行き来しても、ストーリーにの繋がりが切れないように演出されています。客はまるで映画の場面から場面へと切り替わるように様々な世界を楽しむことができます。
2つの座標軸
ディズニーランドはハブを中心にエリアが展開されていますが、そこには2つの座標軸が存在します。1つはメインストリートからシンデレラ城を通ってファンタジーランドを結ぶ軸で、現実と想像の世界の移り変わりです。現実世界の向こうに幻想的な城を眺め、それに近づいていき中を通り過ぎた先には、ヨーロッパの童話の世界、魔法、魔女、幽霊といった子供時代の想像の世界が広がります。
もう1つはそれに直交する軸で、アメリカの過去と未来を結ぶ時間軸です。左側は西部開拓時代、右側は宇宙開発が進んだ未来の世界です。ただし注意が必要です。年々変化しているディズニーランドですが、今だにその過去と未来の起点となっているのは、ウォルトが生きていた時代です。西部開拓時代は普遍的なアメリカ人の原点ですが、一方トゥモローランドの宇宙開発のイメージは、スプートニクショックに始まった50〜60年代、ロシアとの宇宙開発競争の時代を感じさせるものです。
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