【映画】動物愛護は人間の勝手?『ジュラシック・ワールド 炎の王国』ネタバレ感想

映画

映画『ジュラシック・ワールド 炎の王国』のネタバレ感想です。最後に映画をより楽しむための参考図書も紹介します。

恐竜に追いかけられる派手で分かりやすいエンタメ作品だろう、と完全に油断して観はじめました。でもラストシーンでの衝撃的すぎる展開に、そんなイメージは完全に裏切られました。

一見すると分かりやすい善と悪との戦い

本作の主人公と悪の側の対立構造には次の2つの軸があります。

  1. 過去の恐竜を復活させたり遺伝子操作で新しい種を生み出したりする科学の利用を肯定するか、それとも手付かずの自然を守るのか
  2. 人間以外の種である恐竜を利用するのか、それとも愛情を持って保護するのか 

それぞれに対し「環境保護」と「動物愛護」の立場の人間が正義の側として悪と戦う、というのが本作の基本ストーリーです。

主人公のオーウェンは恐竜もちゃんと権利をもった存在として扱います。自分が愛情を持って育てたラプトルを救うために行動を起こします。ヒロインのクレアは前作で恐竜を商売の道具として利用する立場だったのですが、悔い改めて、恐竜を積極的に保護する活動家になっています。1作目のパークに出資した人物であるロックウッドは、失った娘への思いから人間のクローンを作るほどの狂人でしたが、こちらも改心し、恐竜の保護に協力しています。議会で環境の改変を否定するマルコムを含め、彼らが「善」のサイドにいます。

そして最後にはもちろん主人公が勝利する展開になります。悪者たちはクレアのように改心するパターンか、もしくは金儲け主義の実業家ミルズ、恐竜兵器を生み出す科学者ウー、恐竜を殺す傭兵ウィートリーといった面々のように死ぬか敗走していきます。めでたしめでたし、ですね。

  • 善:オーウェン/クレア/ロックウッド(動物保護)、マルコム(環境保護)
  • 悪:ミルズ/ウィートリー(動物利用)、ウー(環境改変)

衝撃すぎるラストシーン

終盤、毒ガスの充満する建物に閉じ込められた恐竜たちを外の人間社会に逃がそうとするクレアですが、オーウェンの静止で冷静になり、悲痛な表情で恐竜達を見殺しにする判断をします。切ない気持ちになるシーンであるが、世界の平和が保たれたのを見て思わずホッとします。しかしそこでなんと、ロックウッドの娘のクローンであるメイジーがとんでもない行動にでます!これで世界は大変なことになる・・なんということでしょう。

一瞬あぜんとした後、これがすごいシーンだと気づきました。メイジーは恐竜と同じく人間の科学で生み出された存在であり、人間とは違う種なのです。結局はクレア達の恐竜保護なんてものが人間に害がおよばない範囲での話で、最後は人間が優先されるのです。あくまで人間の視点での善でしかありません。上記の善と悪の分類にはメイジーは入含まれていません。なぜなら、それはしょせん人間中心の世界の中での戦いにすぎないからです。そこまでの展開で語られた善と悪とが一瞬で相対化されてしまいます。頭をガツンとやられた気分です。

人間の都合が破壊された世界

そしてまさにタイトル通りの世界が訪れます。そこは人間の都合というものががみごとに破壊されてしまった世界です。もう観客はそれを見て、最悪なひどい状況だと純粋に思うことは許されません。そう思う自分の視点がどこにあるのか、そんなことを嫌でも考えさせられるのです。

参考図書

『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ

人類が地球に誕生して以来、どれほど地球上の生物を利用し、果ては絶滅させていったのかが書かれています。また、現在でも超効率的な畜産のシステムで、いかに効率的に食肉を消費しているかにも言及があります。人間と他の生き物の関係を改めて考えてみるのに良い本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました