テクノロジーの進化が私たちの生活を日々変えていっていますが、「食べ物」についても例外ではありません。過去、限られた素材を各家庭で調理していた時代から、素材が工場で加工されてから食料品店に並ぶようになり、様々な加工品が長期保存できる状態で買えるようになりました。食べ物の工業製品化です。それが家庭やレストランで食べられるメニューに多様性をもたらしてきました。本書は、そのさらに先、培養肉やAIなどの最新のテクノロジーによって食文化が次の段階に進化しつつある現状を教えてくれます。
基本情報
作者:田中宏隆、岡田亜希子、瀬川明秀(コンサルタント)
発行日:20207/23
ページ数:400
ジャンル:社会科学>経営学>ビジネス書>食品
読みやすさ
難易度:簡単
事前知識:不要
おすすめ予習本:食の歴史の本ですが、加工技術の進化に肯定的です。
目次とポイント
序章 フードテック革命に「日本不在」という現実:食には強いイメージの日本が、テクノロジーの面では世界に遅れをとっている
第1章 今、なぜ「フードテック」なのか:テクノロジーが楽、時短、安価といった効率の追求ではなく、食の「価値」を高める方向に進化している
第2章 世界で巻き起こるフードイノベーションの全体像:食材から小売、調理、外食まで、対象となる領域は多岐にわたる
第3章 With&アフターコロナ時代のフードテック:外食のデリバリー化、料理のエンタメ化、などの変化が進んでいる
第4章 代替プロテイン」の衝撃:植物プロテインはほぼ肉と同じ美味しさまで来ている。次は培養肉。
第5章 「食領域のGAFA」が生み出す新たな食体験:キッチンosが食材とレシピを管理する
第6章 超パーソナライゼーションが創る食の未来:個人の健康や嗜好と食品のデータによって、個人単位で最適化された食品、レシピが提案される
第7章 フードテックによる外食産業のアップデート:シェア型キッチンによるデリバリー、ロボットと自販機による無人化
第8章 フードテックを活用した食品リテールの進化:パーソナライゼーション、無人化、付加価値の提供などを進めないと、今後の小売店舗は厳しい
第9章 食のイノベーション社会実装への道:業種をまたいだ協力関係が必要
第10章 新産業「日本版フードテック市場」の創出に向けて:日本でフードテック革命を進めるための具体的な提言いろいろ。
おわりに 改めて思う「日本はすぐ動かねばならぬ」:このままだとITで負けた過去を繰り返しかねない
感想
食という分野は難しそうだな、と思います。なぜなら「効率」と「価値」のどちらに振れすぎてもダメなところです。楽に安く美味しいものを食べることだけを追求したら、冷凍食品などの進化がそれを叶えてくれるかもしれません。でも、そうすると自分で作る喜びとか、地域や家庭でのローカルな食の個性や文化が失われてしまう。料理の作業が少ないと楽だけどつまらないし味気ない。一方で多過ぎると面倒で負担になる。どのバランスが最も幸福かは人それぞれかもしれない。その辺を総合的に考えて戦略を立てていかないければいけないフードテックの分野は本当に難しそうだな、と業界に関係のない自分は無責任な感想を持ちました。でも、その価値の複雑さが逆に食の面白いところなのかもしれません。
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