【書評】あの人が持っている技術には、どんな力があるのか『ゴルギアス』プラトン

哲学

古代ギリシアの哲学者プラトンの著書の入門にぴったりの読みやすい本です。初期の対話篇と呼ばれるものの1つで、ソクラテスが3人の人物と対話する形式で話が進みます。相手は3人。弁論術の達人ゴルギアス、その弟子ポロス、政治家のカリクレスです。道徳を離れた説得術である弁論術への批判や、民衆迎合的なアテネの政治批判などが主なテーマになっています。

ソクラテスが質問をして相手の答えの中に生まれる矛盾をついて見事に論破していく姿を爽快と見るか、逆に嫌な奴だな〜と見るかは人それぞれでしょう。私はどちらかといえば後者でした・・。ソクラテスは、弁論術というものが、道徳的に善いことかどうかは無視して民衆の耳に心地良いことを並べ立て、とにかく説得することを目的とした実利的な技術であることを明らかにしていきます。それに対し、哲学なんてものを大人になってもやっているのは才能の無駄使いで、それによって自分の身も守れないじゃないかというカリクレスのある意味常識的な意見に、思わず共感してしまいそうになります。ソクラテスが、相手が建前上同意せざるを得ない小さなことへの同意を積み重ねてその後に矛盾を追求したり、別の例え話、例えば医術についてのことに同意させた後、それと弁論術との比較をして自分の意見への同意を誘導したりするねちっこい論破の技術はすごいです。できれば、こんな人と議論したくないものですね。

基本情報

作者:プラトン(古代ギリシアの哲学者)

成立年:前4世紀

翻訳者:加来彰俊

発行日:1967/6/16

ページ数:368

ジャンル:NDC 131, 哲学>西洋哲学>古代哲学

読みやすさ

難易度:プラトンの著書の中でも、また哲学書の中でもかなり読みやすい部類のようです。ちゃんと会話で成り立っているので、さらっと読めます。

事前知識:古代ギリシアの歴史について軽く知っておくと良いでしょう。

おすすめ予習本:

目次とポイント

ゴルギアスとの対話:弁論術は人を善い状態にするのではなく単に快楽を与えるものであり、技術ではなく迎合である

ポロスとの対話:不正を行うより不正を受ける方がより善いことで、不正をして罰せられないよりも罰せられる方が善いことである

カリクレスとの対話:優れた政治家とは、民衆に迎合するのではなく、民衆をより優れたものに変えることができる人のこと

感想

結局、「善い」とか「正しい」という言葉の明確な定義が説明されないので、ソクラテス(プラトン)の主張があまり腑に落ちませんでした。今の快楽を与えた結果、将来害をなすことが「善い」の反対ならば、「善い」とは将来も含めた快楽を最大化するという功利主義的な考えになります。その場合の善はつまるところ快楽に還元されてしまいます。でも話の流れ的にはプラトンが言っているのはそういうことではなさそうです。ではいったい彼にとって「善い」と言うのはどういう状態のことなのか?。もっと著作を読んで答えを見つけていきたいと思いました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました