今も昔も、アンチエイジングや健康法についての膨大な情報が本やインターネットに溢れかえっています。その中から本当に信頼できる手法を選択して、さらに実践に移していくとなると、至難の業です。でもはっきり言って、この本はその難しい問い対する答えを与えてくれます。著者はパレオさんとして有名なブロガーで、これまで読んできた学術論文は10万本を超えるそうです。そこで得た最新の科学の成果から、アンチエイジングに本当に効く(可能性が最も高いと思われる)手法を厳選して紹介してくれています。著者の経験論でもなく、特定の研究の成果を盲信するわけでもなく、ましてやスピリチュアルな要素はゼロで、徹底して理性的に選ばれた方法だけが載っています。これだけ内容に信頼感のもてる健康本は他にはなかなかないでしょう。
さらに素晴らしいのが、理想主義的で完璧な生活を読者に押し付けない姿勢です。本書では運動や食事などの分野ごとに、簡単に取り入れられるシンプルなものから、徐々に難易度の高い手法を紹介していくスタイルがとられています。その人の目指すゴールの高さや、日々受け入れられる制約のレベルに応じて、自分にとってちょうど良い手法を読者が選んでいくことができます。例えば運動で言うと、かなりきついHIIT(高強度インターバルトレーニング)が最高レベルですが、逆にレベル1として紹介されているのは、単に自分の生活の中身を「考える」だけというプラセボ・トレーニングです。
基本情報
作者:鈴木裕(サイエンスジャーナリスト)
発行日:2021/2/3
ページ数:320
ジャンル:NDS 498, 自然科学>医学>予防医学
読みやすさ
難易度:読みやすいです
事前知識:不要ですが、あえて言えば、科学的なことを受け入れる理性が必要です
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目次とポイント
1 理論編―正しく知る(苦痛⇔回復)
適度で有害じゃない苦痛を心身に与えることが大事。残念ながら、楽して若さを保つのは無理
2 実践編―正しく苦しむ(運動, 毒とファスティング, メンタル)
日常の運動量を増やすことから初めて徐々に負荷を増やす。HIITが理想。ポリフェノールを摂取する。無理せずできるレベルでプチ断食をする。
3 実践編―正しく癒える(栄養素, 睡眠, 美肌, 脱洗脳)
摂取カロリーあたりの満足度、栄養価、吸収率、効率などの質が高い食べ物を選ぶ。睡眠の質を上げるためのチェックリスト。美肌は保湿、日焼け止め、レチノール。老化に対するネガティブなイメージを捨てる。
4 ロードマップ編―正しく行う(ロードマップ)
紹介された多くの手法を目的別にロードマップ化してくれています
感想
先日読んだ『ライフスパン』が、若返りの薬について詳しく触れて未来を語っていたのに対し、本書は今すぐにでも取り入れられる日常のアクションにフォーカスした良書です。想像していた通りですが、やはりこれだけやっていればOKという魔法のメソッドは存在しませんでした。昔から何となく体に良いと言われてきたことの中身の精度を、学術論文をベースに極限まで高めているという印象です。本当に効くことと効かないことの選別、どの程度やれば良いかという定量的なガイドライン、運動からメンタルまでカバーする網羅性。とりあえず今はこの本さえ読んでおけば十分だな、と本気で思えます。読みながら、これはできそうだな、これはちょっと自分にはハードルが高いな、といった感じで手法を選び、明日からでもすぐに生活に取り入れられます。
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