【映画】前作のオマージュと変化『メリー・ポピンズ リターンズ』ネタバレ感想

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ディズニーの実写映画『メリー・ポピンズ リターンズ』のネタバレ感想です。最後に作品をより楽しむための参考図書も紹介します。

前作とほとんど同じストーリーの流れ

前作のファンであれば、オープニングのシンデレラ城の前の道が「桜通り(Cherry Tree Lane)」になっているのを見ただけで胸が熱くなることでしょう。本作は、1964年の『メリー・ポピンズ』の25年後のバンクス家の話ですが、続編というよりむしろリメイクと言っても良いほど、ほとんど前作と同じ構造でできているという印象でした。登場人物を1世代分入れ替えて、同じ展開を繰り返しています。バンクス家、公園、銀行など、懐かしい舞台が時代を変えて登場します。エミリー・ブラントの演技も完璧で、仕草、表情どれをとってもこれぞメリーポピンズだという違和感を感じさせないものです。アニメと実写が融合したシーンも健在で、今ではめったに見られないディズニーの手書きアニメの新作カットが見られます。

そして何と言ってもストーリーです。親子関係が上手くいっていない家庭にメリーポピンズが乳母として登場します。彼女が魔法を使って子供達の自由な心を蘇らせ、それが父親の心を救い、家族を救う。そしてメリーポピンズはそれを喜びながらも、役目を終え、寂しい表情をして去っていく。この感動の展開の再現、ファンにとって感涙ものです。一方で、もちろん前作と全く同じというわけではなく、変化していると感じる部分もありますので、ここからはその「変化」について話したいと思います。

親子関係の変化

前作のストーリーの特徴的なところは、子供たちの親に対する目線の変化があることです。物語の前半、厳しくて規律正しく、遊び心のない親のもとで抑圧されているマイケルとジェーン。そこにやってきたメリーポピンズの魔法や歌で、自由な発想を持って日々の生活に楽しさを見つける「子供心」を取り戻していきます。しかし父親はそれを否定し、子供たちを厳しくしつけようとします。そこまでは子供たちの視点ですが、後半、子供たちが起こしたトラブルで父親が銀行の役員をクビになるところから視点が変わります。厳しい社会の規律の中で孤独で相談相手もいない、でも自分なりに家族を守ろうとして頑張っている。愛情表現は良いとは言えないが、実は悩める善良な父親。そんな父親が子供たちに影響されて自由な子供の心を取り戻し、救われていくのです。

一方『リターンズ』では、そんな転換はありません。本作でマイケルは始めから具体的な問題をかかえています。家を奪おうとする明確な敵がいて、奥さんを亡くした悲しみがある。その状況が彼を追い詰め、子供達への愛情をそそぐ余裕を奪っています。子供達がメリーポピンズの教えで成長し父親を救うという一貫した流れが序盤からあります。前作が公開された1964年と現在では、親子の関係が変わってるのでしょう。規律正しくて厳しく、権威ある親の姿は現在ではリアリティがありません。子供と親の関係はよりフラットになっています。本作では、子供と親がともに成長し、ピンチを切り抜けて家族を守るという、今の私たちにとって自然に受け入れられる展開になっています。

失ったものなんてない

そして本作にある新しいテーマは、失ったものに対する捉え方です。メリーポピンズが歌いながら子供たちに教えるのは、「見方を変える」ことと「失くなるものはない」ということです。母親は死んでもいなくなったわけではない、自分たちの心の中にいて、いつも見守ってくれている。そんな思いを子供たちから聞いたマイケルは見方を変えて、家を手放すことに決めます。家を失っても家族の思い出や絆が消えるわけではないのです。家が無くなることよりも、もっと大事なものに気づくのです。

メリーポピンズが見せる世界、文句なしに楽しい歌やダンスがこのミュージカル作品の見どころです。そこに彼女が子供たちへ贈るそれらのメッセージが自然に入れ込まれているのも本作の魅力の1つでしょう。

参考図書

本ではありませんが、この映画を観ると前作が出来た経緯とそこにあるウォルト・ディズニーの思いがよく分かります。

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