哲学のにわか知識をつけたいと思い立って、まず『哲学用語図鑑』と『続・哲学用語図鑑』を読んでみました。すごく分かりやすかったんですが、やはり用語図鑑というだけあって中身は歴史の流れというよりは用語解説の羅列になっていました。だったら次はこれだろ、ということでこの『哲学大図鑑』を手に取りました。
図鑑出版大手のDK社というところが出している人文科学系のシリーズを日本語訳したものの中の一冊です。
本書の構成は、主要な哲学者とその人の主張を図鑑形式で、歴史上の時系列順に並べています。読みやすくするための工夫に溢れていて、哲学の全体像をなんとなくさらうにはもってこいの本になっています。主な特徴を挙げてみます。
- 前史、後史という形で、影響を受けた人と、その後に影響を与えた人を解説していて、その分野の歴史の流れが大まかに分かります。
- 理論を説明する図はもちろんですが、話題に関連する絵画や写真が豊富に載っていて、文章だけでなくイメージでも楽しむことができます。
- 理論の解説がメインの文章ですが、それと合わせてそれぞれの哲学者の経歴について顔の絵や写真付きでコラムが書いてあります。
より深く哲学を学ぶきっかけとしてオススメ
大型本で300ページ以上あるので、本を持つとかなりずっしりとしたボリュームを感じます。これを読めば哲学の知識がかなりつきそう!と期待して読み始めたのですが、そうは行きませんね。読み始めると、内容はさらっと哲学の入り口を紹介している印象で、紹介している哲学者も『哲学用語辞典』より少ないです。でもそれも当然で、哲学と一言で言っても形而上学、認識論、倫理学、政治哲学、言語学、科学哲学、などなど多くの分野があります。しかもそれを古代ギリシアから現代まで網羅するというのだから、無理もない話です。例えば、現代思想で重要と思われるレヴィ・ストロースの「構造主義」について触れられていないのが拍子抜けでした。決まったボリュームの中で取捨選択した結果だろうとは思いますが・・。
本書は図鑑と言っても、それさえ読めばあるていどの網羅的な知識がつくというようなものではありません。なんとなく自分が共感できたり、気に入った哲学者をピップアップして、さらに文献を読み進めていくためのきっかけにするための本です。私は理系出身の技術者なので、経験主義、科学哲学、プラグマティズムあたりはすっと腑に落ちる部分がありました。一方で、形而上学、観念論、実存主義なんかに共感する人もいるでしょう。そんな感じで、それぞれの興味に応じて読書の幅を広げていくのにすごく役立つ入門書だと思います。
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