はじめに断っておきますが、これは専門的に数学を学んだことがない素人が書いています。
本書は松坂和夫先生による数学入門シリーズの第一巻です。テーマは現代数学の基本言語というべき集合と位相です。非常に抽象性が高く理解が難しい分野ですが、とても分かりやすい記述で、高校レベルの数学の知識しかない人でもじっくり繰り返し読めばなんとかついて行けるようになっています。
基本情報
作者:松坂和夫(数学教授)
発行日:2018/11/7
ページ数:340
ジャンル:NDC 415, 自然科学>数学>位相数学
読みやすさ
難易度:難しいです。概念の説明は分かりやすいですが、定理の証明は簡潔に書いているところもあり、初見だと理解が難しいところがありました
事前知識:高校数学レベルの知識は必要です
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目次とポイント
第1章 集合と写像:集合は物の集まりなら何でもあり。数でなくても良い。とにかく全てが極端に一般化された話が始まる
第2章 集合の濃度:集合に含まれる元の数は、無限集合だと数えられない。それを「濃さ」のようなイメージで集合間の相対比較のみで定義する
第3章 順序集合,Zornの補題 :元の順序も何でもあり、大小でなくても良い。例えば0より大きく1より小さい実数の集合、などの最大最小がない場合の議論が面白い
第4章 位相空間:集合に「開集合」によって移送構造を定める。多次元の実数の集合(ユークリッド空間)に「球」という開集合を定義することで位相構造となる
第5章 連結性とコンパクト性:いくつかの特筆すべき「性質」を持った位相空間についての議論
第6章 距離空間:位相空間に「距離」という性質を定義する。位相の特殊なケースで未だ高度に抽象的だが、現実世界の距離の一般化なので少しイメージしやすい
感想
こんなに抽象的で難しい内容なのに、説明のための図はかなり少なく、ほとんど式と文章だけで書かれているので正直辛いものがありました。ただ、それもそのはずです。集合という一般化された概念の説明なのに、それを2次元の紙に図として書いてしまった時点で、途端にそれは2次元ユークリッド空間という特殊なケースの説明になってしまうからです。さらに、集合の集合、写像の集合、直積、点列の点列・・などなど、かなり複雑な入れ子になった概念が多く、図や表にするのはとても無理だろうと思います。頭にビジュアル的なイメージを持ちにくいのは当然だし、むしろ持ってはいけないとも言えるのです。何ともやっかいですね数学は・・。
集合・位相を数学入門として初めに学ぶことの難しさは他にもあって、何よりもこれを何に使うのか、何のために学ぶのか、という目的が見えないことです。歴史的には、もっと具体的な問題を解くための手段としてより一般化した概念を作り出したのだと想像されます。それが確立された後に、その一般論から入って特殊ケースに応用するのは正しい展開なのでしょうが、ちょっと数学でも勉強してみるか、という私のような素人には少しハードルが高いのも事実です。
しかし、その徹底した一般化と厳密な議論は、シンプルに読んでいて面白いです。数学者の頭ってどうなってるんだと。そしてさらっと載っている複雑な定理の証明は、順を追って読んでいけばまあそうか、となりますが、これを白紙から考え出した人たちがいたと思うと信じられません。頭の良さが尋常じゃないですね。
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