DK社の社会学系の図鑑シリーズの経営学編です。経営学という学問についての本というよりは、ビジネス実用書のエッセンスを詰め込んだ楽しい読み物といった感じです。このシリーズは、学問の発展を歴史の流れを追って解説するスタイルが多いのですが、本書はリーダーシップ、財務、企業戦略など、ビジネスにおけるシーン別に章立てされています。経営学が体系的に知識を蓄積する学問というよりも、ビジネスを成功させるための実務的な方法論の研究という面が強いことを思わせる構成です。
ヘンリー・フォードからスティーブ・ジョブスまで、大成功した起業家たちのエピソードもたくさん紹介されています。その成功と経営学の様々な手法との関連性が解説されており、飽きることなく読み進められます。
経営学はいくつもの分野の集合体
企業には様々な部門があり、それぞれの専門分野に長けた社員たちが分業して事業を運営しています。企業戦略、財務、開発、製造、販売、マーケティング、などなど。それらの多岐にわたる事柄をまとめていかなければいけないのが経営者なので、自然と経営学という分野の裾野も広がっていくのでしょう。だから経営学の歴史、という時系列の記述ではこの図鑑を編集することができなかったのだと思います。
こういった特徴があるので、経営学はその他の学問分野からの理論を借用してきて経営に応用するという側面があります。その発想から書かれた経営学の本に『世界標準の経営理論』があります。こちらの本は、経営学の基礎になっている経済学、心理学、社会学という分野の括りで章立てする非常に体系的な構成になっていますので、経営学大図鑑で興味を持った人が次に読む本としてとてもおすすめです。
仕事のモチベーションを高める最高の薬
この本の様々なトピックを眺めるたびに、自分の日々の仕事のことを思わずにはいられません。私は企業の経営戦略に携わるような立場ではありませんが、自分の会社がどういう戦略をとっているのか、ひとときでも企業全体の視点に立って考える良いきっかけになります。一方でリーダーシップやマーケティングなどは実際の業務に関わることなので、数ページ読むたびに、そういうことあるよなあ、と自分の仕事のことを考えこんでしまってなかなか読み進まない状態になってしまいました。
気がつくと、自分の仕事に対するモチベーションがかなり上がっていることに気がつきます。それは一瞬のことかもしれませんが、少なくとも読んでいる間はやる気が出て、仕事のことを考えて生じるストレスも減っている気がします。ビジネス書を読む最大の利点はそういうところにあると常々思っているのですが、ビジネス全体を俯瞰する本書は、その効果も抜群に高いと言えるでしょう。
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