前作『ケーキを切れない非行少年たち』で、非行の原因として軽度な認知機能の障害があるという新たな視点を示した著者の続編です。今回は非行少年を支援する際に課題となる、どうしたら頑張ってもらえるのか、というモチベーションの問題を語っています。前作が、非行をするのにも本人の倫理観以外の理由がある、という視点なら、今回は社会復帰に際してどうしても頑張れない人にも、やる気以外の理由があるという視点です。
基本情報
作者:宮口幸治(社会学者)
発行日:2021/4/19
ページ数:192
ジャンル:NDC 368, 社会科学>社会>社会病理
読みやすさ
難易度:簡単です
事前知識:不要です
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目次とポイント
第1章 「頑張ったら支援する」の恐ろしさ:とにかく頑張れと言っても、状況によっては逆効果の場合がある
第2章 「頑張らなくていい」は本当か?:かと言って頑張らなくて良いと言うと本当に頑張らない場合がある
第3章 頑張ってもできない人たち:頑張れない理由は、認知機能の弱さ、将来の見通しの無さ、低層の欲求段階が満たされていない、などがある
第4章 やる気をうばう言葉と間違った方法:とにかくやれ、でもな、もっとできる、だから言ったろ、いつもお前は、
第5章 それでも認められたい:頑張るまでの段階は、将来の見通し、目的の発見、社会への使命感
第6章 支援者は何をどうすればいいのか:頑張るを支える要素は、安心させてくれる存在、付かず離れず支えてくれる存在、無理せず挑戦できる環境
第7章 支援する人を支援せよ:保護者のモチベーションを保つことも重要
第8章 “笑顔”と“ホスピタリティ”:保護者には、まず笑顔や気遣いなどの基本的な対人スキルが重要
感想
モチベーションの高め方については、非行少年に限らずビジネスの場でも重要なテーマです。それについては色々は本が出ていますが、結局これが特効薬だ、と言う決め手を見たことがありません。その人の性格、これまでの経験、今の環境、などなどによって臨機応変な支援をする必要がある、というのが大方の結論でしょう。本書もそれに漏れず、さまざまなノウハウを教えてくれますが、それを読者がバランスよく使いこなすことが求められる印象です。頑張れ!と後押しするのが良いのか、はたまた頑張り過ぎなくて良いよ、と引いた立場をとるのか、どちらが正解かは場合によるとしか言いようがないようです。とにかく中庸の考え方で、常に支援の方法を練り直し続ける必要がありそうです。頑張れない人を頑張らせる、本当に難しそうです。
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