【書評】『あたらしい世界の資源地図』ダニエル・ヤーギン

社会

原油価格はなぜ激しく変動するのか? 米中関係はどうなるのか? 地政学とエネルギー分野の劇的な変化によって、どのような新しい世界地図が形作られようとしているのか? 地政学リスクから第一人者が読み解く『ウォール・ストリート・ジャーナル』ベストセラー

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感想

アメリカのシェール革命が変えた勢力地図、ロシアの資源外交、中国の南シナ海と一帯一路、中東の紛争の歴史、そして気候変動。あまりの面白さに500ページもあるとは思えないほどあっという間に読んでしまいました。エネルギーは自分の生活に直結する重要な話題でありながら、自分はこうも何も知らなかったんだな、と改めて驚きました。

神様が何を思ってそうしたのかは分かりませんが、世界にはエネルギー資源が「偏在」していて、そこに人為的な国境線が引かれています。その事が数々の国家や民族間の紛争や衝突を生み出してる救いのない状況を知るにつれ、気分が沈んでいきます。シェール革命などで世界的なエネルギーの調達先が多様化してきているとはいえ、まだまだ資源の偏在に起因する争いが収まる気配はありません。資源がなければ国家の立場は弱くなりますが、一方で資源があったらあったで、独裁政権が維持されてしまったり、資源に依存して他分野の経済成長が遅れたりと、そこに住む庶民にとって本当に良いことかは怪しいです。

アメリカ人が書いた本なので、どうしてもアメリカ視点になっているとは思いますが、読んでいくと、それぞれの国に対する自分の感情的な見方が作られていくのを自覚することになりました。アメリカがシェール革命で有利になったのはなんだか嬉しい。権威主義のロシアが豊富な資源を持っていることはなんだか恐ろしい。中国の覇権主義も恐ろしく、主張する南シナ海の国境線はさすがに無理がある気がする。中東にイスラム原理主義と石油資源があることが悲劇を生んでいるように見える。これが素直な感想ですが、これらがある程度のバイアスがかかった見方なのは間違いないでしょうから、今後もなるべく冷静にフラットに世界を見られるよう気をつけていきたいです。

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