文学作品を読み解くための理論である文学理論(あるいは批評理論)の入門書です。前半で基本的な文学理論のキーワードをいくつか挙げて解説し、後半はより最新の、現在重要となっているトピックを選んで掘り下げてるというスタイルです。私は文学理論も思想史もほとんど知らない素人なのですが、ふと興味を持って読んでみました。でも正直、内容の半分以上は理解できなかったと思います。基本的な専門用語など、ある程度の前提知識があることを前提に書かれているという印象です。前提知識がある人にとっては、最新の理論と思想の地図を俯瞰できる良質なまとめ本なのでしょう。一方でたとえ分からなかったとしても、知らない用語を知るために調べてみたり、過去の名著を読んでみようというモチベーションを上げてくれる本であることは間違いありません。素人にとっても、各章末のブックガイドを眺めながら文学理論の世界に船出していくというような、きっかけ作りに良い本ではないでしょうか。
基本情報
作者:三原芳秋、他
発行日:2020/3/26
ページ数:276
ジャンル:NDC 901, 文学>文学理論
読みやすさ
難易度:人文系の専門用語が多くてなかなか難しいです(理系にとっては)
事前知識:最低限の社会学、哲学などの基礎知識がないと理解できないです
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目次とポイント
第1部 基礎講義編
第1章 テクスト:ストーリーとして要約されない文章の細部を読む
第2章 読む:作品の表面上の意味とは別の細部にある作者の無意識を読む
第3章 言葉:作品の言語圏に対して異文化の要素を持った人が書く「マイナー文学」
第4章 欲望:女性の権利運動からジェンダー論、そしてクィア理論へ
第5章 世界:作品世界を取り囲む多層的な外部との関係を読む
第2部 トピック編
第6章 帝国:植民地解放→ナショナリズム→グローバリズム→環境問題
第7章 ポストヒューマン/ニズムと文学:人間、動物、自然、科学の関係
第8章 環境と文学:自然と人間の関係
第9章 精神分析と文学:フロイトから始まる、無意識の探求
第10章 ジェンダー・セクシュアリティと文学:フェミニズムの歴史
感想
理系の自分としてはかなり読みにくい本でした。いろいろな理論や思想が、大系立ててというよりは思想史の流れをメインに整理されているため、それぞれの思想家たちの古典にある程度通じていないと理論の構成がわかりにくく、本書の全てを理解するのは難しいと感じました。この本を読めば文学作品を読み解くツールが手に入るんじゃないか、という浅はかな考えを持っていたことを深く反省しました。自分の不勉強さが身に染みたので、この本をブックガイドとして勉強していきたいです。
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