この本は、現状に違和感を持ち、組織やチームを変えたいと思う人に向けて、これからの時代にふさわしい組織像と、実践的な変革メソッドを紹介します。最も重視しているのは「関係性の質」です。ここが変わることで、チームの「思考」が変わり、「行動」が変わり、「結果」もついてきます。本書では、そのために必要な「心理的安全性の創出」「仕事の意味の共有」「内発的な動機づけ」といった具体的手段を、世界基準の理論に基づいて紹介していきます。
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感想
2018年に邦訳が出た『ティール組織』を読んで、それまで当たり前だったトップダウンで数値目標を管理する官僚主義組織に対する痛烈なアンチテーゼに衝撃を受けました。管理職を無くして全てをボトムアップで運営するチームという形は、まさに会社で感じる閉塞感を打ち破れそうな魅力的なアイディアでした。それから3年ほど経って、こういった一般的なビジネス書に同じような話題が当たり前に出てくるのを目にすると、時代の流れがそちらの方向に向かっているという実感が湧いてきます。
目新しい話題はそれほどありませんでしたが、新時代の組織のあり方を整理して、最新の組織論を引用してまとめてくれている良い本でした。マネージメントをどのように変えていったらよいか、本書が与えてくれるいろんな視点のアイディアを眺めていくうちに、なんとなく理解できてきます。
この手の主張で最も共感できるのが、従業員の幸せも追求するという、当たり前なのに今まで無視されてきた目的をマネージメントに入れ込むということです。会社のビジョンの実現のためにいかに従業員が生産性を上げていくか、という問いへの回答として、従業員の内発的動機の発揮や裁量権の拡大など、結果として従業員がより楽しく仕事ができる方向性が与えられていることに希望を感じます。世の中の全員がWin-Winになる理想のような変化ですが、それが現実のものになれば素晴らしいですね。
本書の難点を挙げると、いろんな人のいろんな組織論を余すことなく紹介したいがために、本全体としての主張の流れが不明確になっている気がします。象徴的なのは、例えば、目指す新しい組織の形を言い表した3つのフレーズのうちの1つです。
デジタルシフト:顧客の幸せを探究し、常に新しい価値を生み出す「学習する組織」
P.48
ここだけで、デジタル、顧客の幸せ、新しい価値、学習、と4つの要素が並んでいます。3箇条なのに1箇条に4つの要素があります。これが象徴的ですが、本全体が終始そういう印象でした。
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