「精読する、分析する、書く」の3ステップを徹底攻略! チョウのように軽いフットワークで理解し、ハチのように鋭い視点で読み解く方法を身につけましょう。
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感想
本書は、文学や映画などの批評の入門書ですが、素晴らしいのは徹底的に「入門書」に徹していることです。批評の本というと、やはり脱構築とかポストコロニアルなどの批評理論の解説が始まる場合がほとんどです。一方で本書はあくまでも、今まで物語を漠然としか読んだり観たりしていなかった人向けに、SNSやブログである程度しっかりした感想文を書けることを目指したライトな内容の枠から越えることなく書かれています。新書という形態ともマッチしていて広くおすすめできる本です。
構成も、まず漠然とした読みから脱却するための「精読」のテクニックから入ります。そこから「分析」ですが、批評理論の解説については思い切って他書に譲ると言ってカットされています。その代わり、タイムラインは関係図などの素人が今すぐとりかかれる方法を紹介しています。そこまできたらもう「書く」ことに挑戦です。スマホ片手にアプリなどで映画や本の感想をすぐに書いて公開できる時代に欲しかったのはこういう本だ、という感じです。
それでも、感想を超えた「批評」をちゃんと書こうとしたら、そんなに甘くないよ、ということもしっかりほのめかしてくれます。著者について調べ、関連する作品について調べ、作品の時代背景や文化の背景を調べ、批評理論も適切に応用して・・。巻末には、そういったステップを踏み出すための参考書も豊富に紹介されています。
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