【書評】『マクベス (ちくま文庫)』シェイクスピア

文学

スコットランドの武将マクベスは、荒野で出会った三人の魔女の奇怪な予言と、激しい夫人につき動かされ、かねてからの野心を実行に移していく。王ダンカンを自分の城で暗殺し、王位を奪ったが、その地位を失うことへの不安から次々と罪を重ねていく…。四大悲劇の一つを新訳で。

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感想

マクベスに王位簒奪とその後の死を予言する3人の魔女は、彼の願望が見せた幻だった、という切に一票です。そう考えると、彼は王殺しの誘惑に惹かれながらも、一方でその後の身の破滅も自ら予感していたということになります。確かに、いったん決心を妻に伝えたマクベスは、その後怖気付いたようなセリフを言います。

そこにはっぱをかけるのがマクベス夫人です。彼女も魔女と同じように、マクベスの心の中の葛藤を象徴する存在として、彼と一心同体であるという見方もできると思います。すべてはマクベス1人の心理的な葛藤の象徴であるということです。

そうなると、マクベスの王殺しとその後の破滅は、魔女という幻を通した彼の自己成就的予言になっていると言えます。自己成就的とは、予言を信じて行動することで逆に予言通りの結果を招くということです。

このように自分の願望や不安をなんらかの予言と捉えてしまい、それを実現するような行動をとってしまうというのは、人間の普遍的な性質ではないでしょうか。あくまで勝手な解釈ではありますが、そう考えるとシェイクスピアの人間に対する洞察の素晴らしさを感じずにはいられません。

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