【書評】『リア王 (ちくま文庫)』シェイクスピア

文学

老王リアは退位にあたり、三人の娘に領土を分配する決意を固める。二人の姉は巧みな言葉で父を喜ばせるが、末娘コーディリアの率直な言葉にリアは激怒し、彼女を勘当し二人の姉にすべての権力、財産を譲ってしまう。老王の悲劇はここから始まった。シェイクスピア四大悲劇の最高峰。

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感想

リアは娘たちの自分への愛情をアピールさせて、言葉から計られる愛情の「量」に応じて財産を分け与えます。その過ちが本当に愛情深い末娘のコーディリアを遠ざけることとなり、それをきっかけに彼の破滅と苦しみの日々が始まります。どうしようもなく不幸で救いのないように見えるお話です。

この悲劇の中にあって心を打つのは、狂気に堕ちるリアや生きることを諦めそうになるグロスターたちを支える周囲の人物たちの存在です。リアを献身的に支えるケント伯はもちろんですが、一見ひどい言葉でリアを罵る道化も、その言葉をちゃんと読んでいくと、ちゃんとリアを励まそうとしていることがわかります。コーディリアもリアの仕打ちを恨まず最後まで彼を支えます。一方でグロスターにとってはエドガーという支えの存在がいます。

この夜の人間は完璧ではなく過ちを犯す。そして悲劇的な最後は免れない。その一方で、人間の強さや優しは確実に存在していて、悲劇の後も新しい時代とともに人間の営みは続いていく。本書を読んでそんなことを考えました。

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