インド神話の壮大な叙事詩『マハーバーラタ』の物語を再話し、挿絵つきの読みやすい物語に。背景となる神話やインドの文化をコラムで解説。英語圏で15万部を売り上げている、マハーバーラタ入門として最適の一冊。
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感想
原典を読んだことがないのですが、おそらく著者がかなり現代の読者向けに再構成しているのでしょう。かなり分かりやすく、読みやすいです。
著者の注釈が素晴らしいです。読み解ける教訓、当時の風習から推測される神話の合理的な解釈、インド各地のユニークな伝承などなど、本文に劣らず読み応えがあります。
上巻は主にクル一族の祖先の歴史が語られますが、親子関係があまりに複雑です。気を抜いて読み進めるとすぐに関係性が分からなくなり、楽しみにくくなってしまいます。本書中に細かい家系図があれば、なお良かったです。そう思って、自分で家系図を書きながら読んでみたら驚くほど頭に入り、面白さも倍増しました。
下巻はクルクシェートラの戦いが本格的に描かれます。人間たちの過ちの連鎖によって、結果的に殺戮の嵐となります。誰が勝者で誰が敗者なのかが、戦後のいきさつまでを含めて語られます。圧巻の大河ドラマでした。
なんといってもハイライトはクリシュナの語る「バガヴァット・ギーター」です。戦場で唐突にアルジュナに向けて難解な哲学講義が始まります。インド独特の心身二元論的な世界で、一読しただけでは完全に理解はできませんでしたので、復習が必要そうです。
壮大なエンターテイメントとしても楽しめ、インド文化のテキストとしても使える良書でした。
コメント
はじまして。マハーバーラタ読み始めのものです。わたしは図を書くのがうまくできないので、家系図を探してこちらのサイトに辿りつきました。是非ともこの図のもう少し高画質な画像が見たい(できれば印刷して読む際常に横に置いておきたいくらい…)のですが、見せていただくことは可能でしょうか…?
コメントありがとうございます。読書に活用して頂けるなんて嬉しい限りです。Twitterに高画質版をアップしましたのでご確認ください。