【書評】『ハムレット (ちくま文庫)』シェイクスピア

文学

デンマークの王子ハムレットは、父王の亡霊から、叔父と母の計略により殺されたことを知らされ、固い復讐を誓った。悩み苦しみながらも、狂気を装い、ついに復讐を遂げるが自らも毒刃に倒れる。美しい恋人オフィーリアは、彼の変貌に狂死する。数々の名セリフを残したシェイクスピア悲劇の最高傑作の新訳。脚注・解説・日本での上演年表付き。

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感想

初めてシェイクスピアの作品を読みましたが、松岡和子さんの翻訳はとても読みやすかったです。逆に読みやすいせいですらすら読んでしまい、話の筋を追って読んだだけになった感がありました・・。本来は戯曲なので、声に出すようにゆっくりと、言葉の一つ一つをかみしめて読むべきかもしれません。

復讐を描いた物語は数多くあります。そのほとんどが、復讐の結果ハッピーエンドが訪れることはなく、主人公の破滅や、虚しさだけが残ると言う教訓を残すものになっていると思います。その源流が400年以上前に書かれたこの作品にあるのかもしれません。父親の亡霊から真実を聞いて復讐を誓うのは、その時点では父親への愛情からきたものなのでしょう。しかし、その結果は悲惨なものです。

愛するオフィーリア(実は愛していないという解釈もあるようですが)は、狂気を装うハムレットに演技で冷たくあしらわれ、父親の死をきっかけに不幸な結果を迎えます。そして作品の最後には、さらに多くの血が流れることになります。

ではハムレットは復讐をあきらめ父親の敵を許し、王位を継いでオフィーリアと幸せ暮らせばよかったのか。それはそうなのでしょうが、人間の感情はそれを許さないでしょう。悲劇をまぬがれない人間の救いのなさが普遍的に描かれている気がします。

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